2009/12/15

粋に生きたい そして 逝きたい

不毛地帯の主人公「壱岐正」に、多少の思い入れがある。不毛地帯は映像としては何の面白みもない地味なドラマだが、なかなか見応えがある。

義を重んじるが故に家族を泣かせ、家族を愛するが故に商社に勤め、国を憂うが故に望まぬ競争に巻き込まれ大事な友人を亡くす。そうこうするうち最愛の妻を失い、子どもたちも自分の願いとは大きくかけ離れた選択をしていく。見ていてかなり痛々しいものがある。

作者山崎豊子がなぜこの主人公を「壱岐正」と名付けたのか。私は全く知らないが、いろいろ考えてみるのも面白い。

「息」「逝」「粋」「活」「意気」「域」「行」「征」と、いろんな漢字が浮かぶ。

人生の節目、その折々に、「壱岐」は正しい選択をしたかに見える。しかし、それは必ずしも正しい選択ではなかった。「壱岐」の正しさは、ただ「壱岐」にとっての正義でしかない。そう、それぞれの正義が衝突することは不毛なのだ。

「壱岐正」
・・・こう考えてくると、なかなか味のあるネーミングである。これがルークやリチャードじゃあ台無しだ。もちろんソルトなんぞは論外である。漢字は深い!

しかし、正直下手すりゃ私も壱岐正。不毛地帯に没入していく頑なさと弱さ(強さ)を資質としては十二分に兼ね備えている。鍵は脱力すること。負けてやることだ。力んで勝ちに行ったらエライことになる。正しさをあまり主張しちゃダメだ。正論なんて所詮暴論である。ちょい悪や遊び半分がちょうどいい頃合いなのだと私は勝手に思っている。(勝手に思ってるだけで、全然正しくない)とにかく、信仰があってよかったと胸を撫で下ろしつつ、しみじみしながらドラマを楽しんでいる。




洒落で、Salt流の「生きる秘訣」を谷川俊太郎風にまとめてみた。




生きる


いきいき生きるということ

それは
生きものとして元気であるということ

楽しく生きているということ
昨日の償いでもなく
明日の備えでもなく
今を
楽しく生きているということ

それは
誰かに会いたくなるということ
どこかへ行ききたくなるということ

飯がうまいということ
女が美しく見えるということ
音楽があふれてくるということ

風が心地よいということ
昨日を振り返らないということ
明日の心配をしないということ


息があるということ


永遠につながる今を
生きているということ

2 件のコメント:

  1. なるほど、実は私も彼には自分を投影しております。財前五郎もそうでした。彼などは実に私でしたね。山崎豊子は女性ながら、こういった男の愚かさと脆さを実にたくみに描くものだと思っております。私も桜や、夏の山、そして紅葉と富士山を楽しめる心でいたいものだと願っているわけです。

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  2. 「白い巨塔」も面白かったなあ。財前も「キレる男たち」のある側面を見事に描いてましたね。山崎豊子さんはどういう男に惚れるんでしょうね。いつか聞いてみたいです。

    神の創造と贖いのスケールの大きさと繊細さをともに味わい、また語れると楽しいですね。

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