2009/10/28

飽くなきギターサウンドの探求

高価なギターだからいい音が鳴るわけじゃない。勿論高価なギターは材も良く、作りの精度も高い場合が多い。しかし、値段と音色は必ずしも比例しないし、同じギターでも弾き方や音づくりによって、実際ギターから出てくる音はずいぶん変わる。そこに面白みがあり、資金不足のSalt&Uribossaが入り込む余地が生まれる。

ギターは年月を経て、弾き手や環境によって変化していく。トップが杉材(シダー)のものは作られた時が最も良い音で、年を重ねるごとに響きは鈍くなるが、松材(スプルース)のものは数十年の年月を経て一番良い音になると言う。もともとギターの材にするために選ばれ、それを何十年も乾燥させたものが、ギターのかたちになって数十年。

しかし、ただ放っておけばいいというわけではなく、楽器として演奏されることでボディが振動し、長年の間にヤニなどの不純物が少しずつ抜けていくのである。こうして、名器はギター制作家だけではなく、演奏家との共同作業によって息が吹き込まれるのである。

ネックのかたちや厚みや木の質感などの触った感じ、音の立ち上がりや残響の長さといった音色の細かいニュアンス、低音と高音のバランス、楽器全体の重さ、全体的な弾きやすさや心地よさそしてデザインは、1本1本すべて違うということになる。

特にボサノヴァに適したギターは、本格的なクラシックギターのように、必ずしも音の響きが深いものである必要はない。響きすぎるよりは、音の立ち上がりが早く、残響は短めの「キレ」のあるもの方が良いのだ。だから、稀少材を使った総単板でないと駄目というようえわけではない。むしろ、渇ききった合板などが響く何とも言えない音色が、妙な味わいを醸し出したりするのである。

私が最近よく使っているのは、S.Yairiの矢入貞夫氏の手工品で1967年製のもの。これに剥き出しのピックアップをテープで貼り付けている。

そして、何より大切なことは、その楽器から産み出される音楽の質である。良い音でくだらない音楽を奏でることは一番情けない。まず作りたい音楽があって、それから楽器の品定めという順番が正しい。そして出会ったギターと遊びながら、自分の音を作っていく。

ただのギターコレクターとすぐれたミュージシャンは違う。そんなプライドをもって、ミュージシャンとしてのギター選びと音づくりにこだわりたい。自分にジャストフィットする1本と出会うまで、まだまだ飽くなき探求は続きそうだ。

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