2010/11/06

今日のリコーダー講座から


やたらゆっくりはっきり丁寧に話す戦場カメラマンが人気を集めている。私も最近何度かテレビで見かけて、ついついその「軽妙」というのとは程遠いトークに引き込まれてしまった。そして、今の時代だからこそ、ここまでウケるんだなと思った。

今日は月に1回のリコーダー講座である。

リコーダー講座では、意識的にワルツの練習曲をたくさん取り上げている。ミディアムテンポのワルツが音楽療法的に高い鎮静効果があると考えられているからだ。

私は、軍楽的な士気高揚に用いられた偶数拍子ではないことにその一因があると思っているのだが、それは言ってみれば、カウンター的な癒し効果である。

戦場カメラマン渡部氏がここまでウケているのも、こうした背景とのコントラストがあってのことだ。つまり、茶の間を席捲するワイドショーやバラエティ番組のテンポの速さ、テンションの高さと、無駄な情報量の多さと、質の低さに比べて、その真逆をいっているところに癒し効果が生まれているのだと思う。つまり秘密は、彼のトークのテンポの遅さ、テンションの低さ、情報量の少なさと、質の高さにある。

さらに、今日の講座では、トピックのひとつとして、「クリシェ」を取り上げた。これはフランス語で「決まり文句」「常套句」を意味することばであって、本来はあまり良い意味ではない。

音楽でクリシェという場合、「同じコードが続くときに装飾的に加えられる慣用的なライン。半音あるいは全音の動きをあえて作る作・編曲上の技法」を指すが、これがその名前のとおり、いかに頻繁に使われているかを実際の楽曲を取り上げて説明した。

本当の意味での個性というのは、突飛で新奇なものではなく、普遍的な「型」や「法則」をはずしたものではあり得ないのではないかと伝えた。同一のコード展開の上に巧みに重ねられたメロディの美しさを確認できたと思う。

先の渡部氏も、日本人らしい礼儀正しさが、戦場カメラマンとしての非日常性と重なっているところに魅力があるのだと思う。ウケをねらわないその人らしさが一番いい感じなのだ。これは音楽も同じだ。

6 件のコメント:

  1. 小さな木でも一人前に紅葉してますね。
    「戦場カメラマン」渡辺氏に対して同じことを思ってました。
    確かにブログでもメッセージでもウケを狙っていくとどんどんずれていってしまいます。
    無駄な飾りやきらびやかに見えるものは本物の前にあっては子供だましにもならないもの。
    小さくても自分の置かれた場所でしゅ色に染められたいものです。

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  2. そうですね。あまりのあでやかさに思わず写真とりました。この奧の部屋がいつもリコーダー講座を開いている「学びの部屋」です。

    「子どもだまし」では子どもにも飽きられてしまうんです。

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  3. とても楽しそう。
    普通のリコーダー講座の域を超えて、
    かなりマニアックな内容ですね。

    クリシェが効果的に生きるのは、
    三和音主体で堅固なコード進行を持つ音楽
    の場合だと考えられます。

    Saltさんの文章に啓発されて、
    今度私もクリシェの応用型を試してみようと思います。

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  4. 確かにいわゆる普通のリコーダー講座なるものとはずいぶん違うことをやっています。

    学校で音楽専科をされている方や元ギター教室の先生やフルートやケーナの演奏家など、さまざまな分野の方々が入れ替わり来てくださるので、少しでも参考にしただけることがあればと、トピックをひねり出し、練習曲を作っています。

    とりわけレギュラーメンバーとして神戸から通ってくれている銀じ郎さんには、信仰や療育の視点からメッセージを送っています。

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  5. 昨日はありがとうございました。

    音楽解説?講義?っぽいお話についついひかれ、時間をとらせてしまいました。せっかく用意してもらっていた新曲を吹く時間が減り申し訳なかったです。忘れないように、ちょっと家でも吹いてみました。「色づく街」って南沙織の曲にもあったよな。楽譜を入れる3冊目のファイルが必要です。リコーダー練習曲としての編集と、聴くCDとしての編集があってもいいような曲のそろい方と充実の内容ですね。

    毎回、私のような音楽オンチにもったいないような内容をありがとうございます。
    「涙そうそう」(ビギン)「スピーチ・バルーン」(大滝詠一)の共通ポイントを教えられビックリでした。「普遍的な「型」や「法則」をはずしたものではあり得ないのではないか」と言われることがよくわかります。

    室生へ向かう電車では、自分の仕事の位置づけを再整理しようと紙にメモをしながら考えていました。リコーダー講座を受け、後で風呂や食事などだらだらと過ごしお話できる時間がとってもいいです。何を大切にすべきか、いつも教えられます。
    「信仰や療育へのメッセージ」をどれほど受け止められたかは?ですが、この時間が私の仕事を特色づけていると思っています。特に最近、自分に委ねられたスタンスを確認させられ、より自由になってきたように感じます。

    そういったいろいろな意味で、ありがとう。

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  6. こちらこそです。「リコーダー講座」としてこんなに続くなんて思ってもみませんでした。

    よくご存じのように、このリコーダー講座は、ふるさと元気村時代に、工房「童」の常設アトリエのイベントとして外からの講師を呼ぶ際に、冬の雪やら受講者不足やらに気を使うのがしんどくなって、「取りあえず」の穴埋めのつもりで始めた超テキトー企画だったのです。

    そんなことを思い返すと、この内容の発展、充実ぶりは、まさに銀じ郎さんはじめ、受講者の皆さんのニーズがあったからです。

    本当にありがたいことです。皆さんがいなければ、こんな勢いで練習曲を作るなんてことは絶対なかったと思います。

    私も何でもない会話の中で、自分のよって立つところを確認させてもらっています。

    さすがにもう30年の付き合いなので、遠慮せずしゃべれるのがありがたいです。銀じ郎さんと話していると、「けっこう傍若無人に言いたいことを言ってるようですが、日頃は気をつかってことばを選んでいるんだな」と気づきます。

    そんなわけで、数々の暴言、無礼はお許しください。

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