2010/02/01

サロゲート

「サロゲート(代理)」という映画は実に興味深い内容を扱っている。老いを克服し災いさえ引き受けてくれる身代わり高性能ロボット「サロゲート」によって営まれる代行社会。オペレーター(持ち主=本人)は、自室にこもって自分のサロゲートを操るだけ。夫婦は一緒に住んではいてもたまに顔を合わす程度でそれぞれ自室にこもってそれぞれのサロゲートに自分の人生を託している。主人公を演じるブルース・ウイリスも本人と自分の分身のサロゲートというかつてなかった一人二役で、理想を実現するはずのサロゲートに人間性そのものを浸食されていく心の葛藤を見事に演じている。

映像は現実離れしたSFでありながら、描かれているテーマが極めてリアルなのでストーリーを離れていろいろ考えさせられる作品である。

現代の先進諸国では、サロゲートなる技術などなくても、すでにひとつの人格が場に応じた演じ分けをして、社会のそこかしこでバーチャルとリアルが反転している気がする。お互いが健全な五感を解放し素直な心を曝して触れ合う場がリアルな世界には殆どなくなっている。そうした歪んだ現実を感じ取る感性がこの映画を作らせたのだろう。だから単に「こんな技術が出来たらそんな社会になるかも」という種類の映画ではない。サロゲート・カンパニーやサロゲート・スクール、そしてサロゲート・チャーチでは事件さえおこらない。ビュンさんなんて生身の変態だったのでまだマシかもね。

私が一番印象に残ったのはサロゲートを失った主人公が生身の姿で街を歩くシーン。あれはまさに毎日の私の姿ではないか。

http://wiredvision.jp/blog/takamori/201001/201001191130.html

これを見るともはやSFではなさそうだ。ますますバーチャルとリアルが交錯し反転する世界になるだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿