2011/05/14

のどがかわいた


指導要領の改定によって教科書がかなり分厚くなり、内容も刷新された。国語の読み物でウーリー・オルレブの「のどがかわいた」という作品に取り組んだ。

登場人物が4人出て来るが、次のページをめくれば、そのうちふたりは消えてしまう。主人公と友人はほとんどことばもかわさす、これといった事件もおこらないまま、物語は淡々と流れていく。メインのシーンでも約1時間ガリラヤ湖でただ立って空想しているだけというお話。ほとんどあらすじを書き様がない不思議なドラマである。全く性格のちがうふたりが「水を飲む」という行為の中に、お互いのかわきを感じ取り共感するのだが、このかわきを象徴する背景は日本の小学5年生には読み取り様がない。教える先生達だって、ユダヤ人のことなどろくに知るまい。

というわけで、内容はかなり難しい。わかったつもりになって教え、わかったつもりになって学ぶことは出来るが、この作品を本当に理解するのは易しいことではない。数ある児童文学の中から、誰がどういう意図でこの作品を教科書に採用したのか、また採用されるに至ったのかは興味がある。

写真は、この作品の舞台でもあるガリラヤ湖。私が2001年に撮影したもの。

1931年、ポーランドのワルシャワの裕福な医者の家に生まれたウーリー・オルレブ。幼いころは、自分の出自がユダヤ人であることを知らずに育った。第二次世界大戦がはじまり、町がドイツ軍に占領されると、ワルシャワの学校に通っていたウーリーは担任の先生から「君はユダヤ人だからもう学校に来てはいけない」と言われた。そのうえ、ポーランドの士官だった父親はロシア戦線に送られ、その後、ロシアで捕虜になった。母親とウーリーと弟の三人はゲットーで暮らすことになったが、ウーリーが11歳の時、母親はドイツ軍に殺害された。(著書:ぼくと弟のホロコースト「砂のゲーム」より)

4 件のコメント:

  1. ぜひ、読み取って解説してください。
    以前あった「新しい友達」も、内面の世界に気付く5年生くらいの子の精神発達段階に応じた教材だな、と思いました。目に見える行為だけではなく、内面を理解し合い共有できる発達があるからこそ読み取れる教材と思いました。
    「のどがかわいた」にはさらにユダヤ人の宗教観?哲学観?、それこそなんと言えばいいのか…「のどのかわきを感じられるの。」と聞かれても、その意味することはどう理解したと思えばいいのか。
    それを、まだ内面に気付く発達に至っていな子らも交え、どう授業するのか、また、教えてください。

    返信削除
  2. 単元の配当時間が信じられないほど短いので、深い読みには至っていません。

    文学作品の味わい方はさまざまですが、作品の背景を理解するための最低限の生活経験や感性は要求されます。

    子どもたちに、自分たちの心のダイヤルをどこにあわせればよいかを気付かせてあげる様な方向付けは大事だと思います。

    現代の日本の子どもたちもそれなりに「かわいて」いると思います。

    ユダヤ人の民族としてのかわきや、ウーリーの個人的なかわきもあるでしょう。

    ある民族のある時代の特殊な「かわき」と、人間としての本質的で普遍的な「かわき」が交差するポイントを日常の何気ない景色に鮮やかに織り込むところに文学性が立ち現れます。

    人には「ことばを越えて感じあえる何かがある」ことを平易なことばで伝えようとしているところにこの作品の不思議さと面白さがあります。

    勿論、小学校の授業ではこんなややこしいお話はしませんよ。

    子どもは、本能的に登場人物の○○はクラスの××みたいと感じていたようです。それが一番いいし、とても自然です。

    それを感じもせずに、見事に要点をまとめた子どももいましたが、あまり感心はしません。

    返信削除
  3. はじめまして。
    うちの息子が5年生で、『のどがかわいた』のページの一部破れてしまったので、本文を検索していたところ、このページに遭いました。

    「言葉を超えて感じあえる何かがある」という主題は、5年生の言葉にするのは難しいかもしれないけど、ちゃんと感じていると思います。
    家庭でも学校でどんなことを学んでいるのか関心を持って足りない時間をうめてあげられたら...と思いました。

    返信削除
  4. コメントありがとうございます。

    なかなか教え甲斐のある味わい深い作品でした。

    ブログ引っ越ししています。教育ネタもありますので、よろしければのぞいて見てください。

    新しいコメントお待ちしています。

    http://lastsalt.exblog.jp/

    管理人 Salt

    返信削除