運動会の代休で、少しのんびりさせてもらっている。ありがたいことだ。このゆとりを、たまっている仕事の片づけや諸々のリクエストへの応答に当てようと思う。
最近あちらこちらでコンプレックスに関する話題を目や耳にする。少し前に、友人からの依頼もあったので、この機会に簡単に私見を述べる。
コンプレックスを「劣等感」と結びつけて考える人が多いけれど、学問的に言えば、それは正解ではない。(学問が一般的理解より優位とは全然思ってはいないが・・・・)本来、コンプレックスとは「ある事柄と本来無関係である感情との結びつき」のこと。つまり事柄と感情の複合体である。
コンプレックスの意味は、スクリーンがたくさんある巨大な映画館をシネマ・コンプレックス(いわゆるシネコン)と言うけれど、そのコンプレックスと同じ。数学では、複素数をコンプレックスナンバーと言う。また、文学では、複文のことをコンプレックスセンテンスと言う。いずれも「劣等感」とは関係ない。いずれもただ「引っ付いている」という意味。心理学で使う場合は、「心的複合体」というちょっとわかったような、わからないような訳語がつく。「劣等感」は「劣等複合」といってコンプレックスのひとつの表れのひとつに過ぎない。
コンプレックスが劣等感の同義語として広く受け入れられた背景には、アドラー心理学の流行がある。「劣等複合の克服が人格の成長につながる」とした彼の理論をそのままコンプレックスの説明として無批判に飲み込んだからだ。欧米コンプレックスを克服しながら、高度成長を目指した戦後の日本人の事情にマッチしただけのこと。
コンプレックスは感情の複合。人の感情は「劣等感」だけではない。嫌悪、憎悪、敵意、恐怖、そして、愛着や葛藤など、あらゆる感情がある種の事柄と結びついて人間の深層に潜み、その人の価値観や行動に少なからぬ影響を与える。例えば、ファザコンやマザコンは父母への過度の愛着、エディプス・コンプレックスは息子の父親に対する敵意、ダフネ・コンプレックスは処女の男性嫌悪・・・etc
コンプレックスは、時としてその人の主体性をおびやかすこともある。流行の不登校の原因とされる「学校恐怖症」などもその一例だ。 特に本人が自覚する理由がないのに、どうしても学校へ行けなくなるのである。本人でさえ原因がわからないから問題なのである。学校へ行こうとすると、本当におなかや頭が痛くなったりする。
似非カウンセラーや素人教員は、「このようになったからには何かの理由があるはず」と考えて、子供を問いつめ、「どうして」「なぜ」に当てはまる理由を求める。そうすると、事態はますます混乱するのである。そして、ありもしない「いじめ」を告白させて、ますます親や子どもを袋小路に追いつめる例もある。本人さえほとんど意識出来ない、言語化出来ない原因をさぐり当てるのは、実は至難の業なのだ。
主体性をおびやかすもう一人の自分、それがコンプレックスの正体なのだが、このような分裂的な無意識の中の自己内対話をモデル化したのが、先ほど述べた劣等感コンプレックスの重要性を強調しアドラーである。 アドラーは、フロイトの「性欲」説に対して、人間にとって根元的な欲望は「権力欲」であると主張した。
アドラーによると、人間は誰でも劣等感をもっているが、その劣等感を補償しようとして、「権力への意志」が働くと考えたわけ。 アドラーがこの劣等感を補償する働きに気がついたのは、人が何か特定の器官に何らかの欠損や故障などの劣等性があるとき、それを補償する働きがその人の体にあることを知ったからだそうだ。意外に単純な気づきなので、何だかなあという感じ・・・「性欲」や「権力欲」はいずれも人間の中にプログラムされている要素であるが、それらを極端に浮かび上がらせてモデル化することには、いささか乱暴さを感じる。
患者には、よくわからないモヤモヤに○○コンプレックスという名前を付けてもらって安心したい欲望があり、学者には、自分のモデルの中に人を押し込めて標本化したいという欲望がある。Salt流に皮肉ってやれば、そんな共依存はまさにSMクラブ的なのだ。
いやーなかなかの文章、頭のエクササイズにいいですね。
返信削除誰もがコンプレックスを持ち、それは物や人によっては完全に満たされない。
1って事は2もあるって事で、
なんだか、久々のSalt節全開!1年程前のブログを思い出します。
茶化した様ですみませんが、これも私なもので、はい。
貴重な休息日に無駄話をしてしまい恐縮でした…(汗)
返信削除明日の雨が「秋」を連れて来るようですね。
時間が許せば「森」でお会いしましょう。。。
あ、本文…スミマセン、脳味噌が絡まっちゃって…(汗笑)
電気屋さん、どうもです。
返信削除はい、後で②をUPします。
確かに最近は写真が多くて、ちょっと「弛め」ですよね。
ことばでしか表せないことはことばで、ことばで写真でも表せないことは音楽で伝えています。
キリストを共有することにまさる伝達はありません。
tsucchan158さん、楽しいひとときでした。
返信削除エコーの煙が目にしみましたね。
はい、「森」へ来られるときにはご一報くださいませ~
アメリカン・マガジン、かなりウケてます。相当面白いです。
もし1960~65年あたりのものがあれば、売らずに置いといてね。