2010/05/11

さっちゃんはね・・・・

先日のリコーダー講座のひとこま。

「音楽にとって大事なことは何だと思いますか」という私からの問いかけに対して、参加者のみなさんに思いつくことばを出してもらった。

「リズム、メロディ―、ハーモニー」というような学校的な答えだけでなく、「癒し」「豊かさ」「コミュニケーション」「協調性」「充実」など・・・・ホワイトボードに書ききれないほどの多様な答えが出た。

ひとつひとつのことばが意味するところの背景やそのつながりを私なりに解説しつつ、「人にとって音楽とはいったい何なのか」を出来るだけ丁寧に言語化してみた。

それにしても、それほど深く考えずにパッと発したことばが、各自のこれまでの音楽との関わり方や現状を見事に映した表現だったのには驚いた。

中でも、さっちゃんが答えてくれた「楽しさ」や「和み」といったことばは、他の参加者の心を大きく揺り動かしたと思う。と言うのは、まさに彼女自身がそれを見事に体現しているからだった。

今回の参加者は、たまたまさっちゃん以外は全員教師だった。中には音楽の専科や、銀じ郎さんのように障害児教育のスペシャリストもいた。そして、さっちゃんはダウン症だ。「でも」や「だから」は関係ない。彼女は音楽がただ好きで、音楽を心から楽しんでいて、その姿が周囲を和ませている。

さっちゃんには、幼いころから音楽に親しむ環境があり、ともに楽しむなかまがいる。だからさっちゃんは楽譜も読めるし、楽器の演奏技術も高い。

さっちゃんは、別に歯を食いしばって「でも」や「だから」を乗り越えようとしたわけではないけど、軽~くクリアしているわけだ。

教師は「ダウン症のさっちゃん」という見方をしてしまうことが多い。でも、私たちの意識の中では「さっちゃんはダウン症」なのだ。似たようなものと思われるかも知れないが、この違いは大きい。私たちは音楽を共有することで、さっちゃんの人柄や生き方に触れたので、私たちは障害のことを時々忘れてしまう。

障害のある方々と関わるとき、「福祉的」な配慮も絶対必要である。しかし、大切にしたい関係性の中で「福祉」を第一に考えている障害者なんかひとりもいない。

「楽しむは音楽の楽」「和みは和音の和」である。

まさに私が講座に名付けた「楽しいリコーダー・アンサンブル」のねらいそのものを、さっちゃんはあまりにもサラッと言ってくれた。

ありがとう。さっちゃん。

8 件のコメント:

  1. ”「楽しむは音楽の楽」「和みは和音の和」である。”

    いいですね。
    当たり前の事の様で、気づかないこと多いです。
    音楽は神が与えてくれた贈り物で、本当にすばらしい。

    タラントの話を思わされます。
    自分がどれだけ持っているかどうかでは、無くて
    自分が与えられがものを、どれだけ使っているか。

    脳みその9割以上は確実に使っていない私は
    無駄に場所をふさいでいる実をつけないイチジクを連想させます。さあ、今日も少し使ってみますか。

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  2. 昨日テレビで泉谷しげるが、若い時にライブでチューニングが合っていなくて、それを客に何度か指摘され客にさせた、と云ってましたが、これなんか昔流行った言葉風に云えば「音楽って何だ?!」になるんでしょうね。

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  3. 電気屋さん

    タラントをどれだけ抜け目なく使えるか?

    これ、けっこう大きなテーマです。

    神さまからすれば、これでも「足らんと」言うのか!ってとこでしょうね。

    「足りない、欲しい、あれもくれ、これもくれ」という祈りのオンパレードには主も辟易でしょう。

    私もボンクラ管理人なので、もうちょっと真面目にふざけてみます。

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  4. 泉谷さんのエピソードも、そのキャッチコピーも、私が言ってることとは全然関係なさそうですね。

    演奏者と観客の垣根を崩そうとしているパフォーマンスなんでしょうか。そのワリには偉そうでしょ。あの人。

    チューニングは絶対合わせて欲しいです。チューニングが合っていない楽器による演奏を音楽と呼ぶには無理があります。

    私は泉谷さんに限らず、あの時代のガチャガチャフォーク系の人はどうも苦手です。当時の若者文化としては理解できますけど・・・。

    「春夏秋冬」ならスガシカオの方が好みです。カバーではなく同名異曲ですが。

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  5. いとうすよこ2010年5月12日 23:50

    さっちゃんの話、ありがとうございます!

    私もさっちゃんから一杯もらっていますわ!!

    上手に言えないけど!!!

    SALTさんは、すごいですね!!

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  6. すーちゃんのおかげですよ。

    さっちゃんのコメント聞いて、改めてキンキ雑楽団でやっていることの価値を再認識しました。

    他の参加者の先生たちも、それぞれ個性的で、毎回めっちゃオモロイです。

    ニューヨークとワシントンDCでの演奏、がんばってね~。

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  7. 確かにチューニングの合わないアンサンブルでは
    「楽」も「和」も成り立ちませんからね。

    リコーダー講座、すごくいい雰囲気が伝わってきます。

    受講料を払っていない私でも、
    居ながらにして一端を味わわせていただき、
    感謝でした。

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  8. 過分なコメントありがとうございます。

    今後もさらに楽しみ和みたいと思います。

    そろそろ楽曲の難易度を少し上げたいと考えています。その分曲を作る自由度は増しますが、「ちょうどいい感じ」におさめるのはけっこう難しそうです。

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